22.6.08

記憶のなかの音─Nostalgia


 遠い過去、土のなか深く埋めてしまったものがあった。 そうしなくてはならなかったのは馬鹿げたことに囚われていたから。そして、その上に新しい世界を築いていこうと、じぶんに言いきかせた。

 土はまだ痩せていた。じぶんで十分に水を与える力もない。いくら陽が照ってくれても、干からびていってしまう。

 あの種は、長いあいだ真暗闇の中で、ひとりでもがいていた。けれども、ある日、反応したのだ。 「音」に。

 目を閉じて音の行方を追った。その方角にはじぶんを救ってくれるものがあると、確かに感じたからだ。すると、音は光のようにわたしの中へ入ってきた。

 わたしは、種が自力で芽吹くのをじっと待った。

 その芽は、綺麗な瞳でわたしを見つめた。まるで、なにもかも知っているかのようだった。そして、わたしを赦してくれた。

             
                 ああ わが春
                 ああ いつ
                 ああ いつ いつ
                 あなたの両腕のなかで
                 海と露に濡れて
                 わたしは目覚めることができるのだろう
                 ああ わたしがあなたの傍にいて
                 あなたの腰を抱けば
                 だれも あなたに触れることはできないだろう
                 わたしは あなたを守ることができる
                 うたいながら
                 わたしがあなたといっしょにいるとき
                 あなたがわたしといっしょにいるとき
                 いつ ああ いつ

                       ネルーダ『葡萄と風』より
 
Nostalgia

Nel lontano passato, l’ho sotterrato profondamente. Ho dovuto farlo, perchè ero presa da un pensiero assurdo, dicendomi poi di costruire un nuovo mondo al di sopra.

La terra era povera. Non avevo abbastanza forza di irrigarla da sola. Tanta luce la faceva disseccare soltanto.

Quel seme lottava da solo nel buio per tanto tempo. Però ha reagito un giorno al suono.

Con gli occhi chiusi l’ho inseguito. Ero sicura d’incontrare qualcosa che mi aiutasse a liberarmi. Allora il suono mi è penetrato come se fosse la luce.

Aspettavo con pazienza la sua gemma spontanea.

Il bocciolo con gli occhi limpidi mi ha dato uno sguardo. Sapeva già tutto, poi mi ha perdonato.

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